ニュース

ジャズピアニスト・山下洋輔さんによるKAATのピアノ選定をリポート!!

2010-10-14

KAATのオープンに向け、様々な準備を進めています。今日は、ジャズピアニスト・山下洋輔さんによるKAATピアノ選定の様子をリポートします!!
3台のエリート楽器に対峙する"儀式"  東京湾岸にある、世界的なピアノメーカー「スタインウェイ」のウェアハウス。その一室にあるセレクションセンター(選定室)は、最高級ブランドである同社のピアノが並び、音楽家をはじめとする弾き手たちを静かに待つ空間。なんともいえない高級感を味わえる"木材の香り"が漂うこの部屋で、同社のグランドピアノ「C-227」モデルが3台、すでに上部の天屋根(蓋)をオープンの状態にして、本日の主役であるピアニストを歓迎している。そこに現れたのはジャズピアニストの山下洋輔氏。神奈川芸術劇場に導入されるピアノを選ぶという大きな仕事が、このヴェテランに託されたのだ。 楽器を知り尽くしたスタインウェイ社のスタッフや、芸術劇場の館長、支配人らとディスカッションをした後、その"儀式"はスタートした。「こうした役目をお引き受けするのは初めてのことですが、コンサートホールとはまた違った目的をもつ劇場という場だけに、どういった音がふさわしいのか、どのような音楽の中で弾かれるのか、どう使われると楽器が生きるのか、といったことを考えて選びましょう」と山下さん。まずは3台と対話するように軽く鍵盤へと指を走らせたかと思ったら、早くもアクセルを踏み込んでピアノたちと対峙していく。その放出されるオーラとエネルギー---「ラプソディ・イン・ブルー」をはじめとする得意のナンバーが断片として現れては消え、楽器との関係を築いていくその姿は、周囲の人間も近づけないほどだ。 中サイズ2.JPG  熱を帯びて、もしかすると十八番のひじ打ちが飛び出すのではないかとさえ思える集中度、そして200%の本気度に満ちた約30分。3台のピアノは2台に絞られ、演奏がストップ。山下さんが立ち上がると「君がいいね」とばかりに1台のピアノへ手を置く。しかしさらに、そこでスタインウェイ社スタッフの説明を聞くや、再びピアノの前に座って試奏。およそ5分後に山下さんが選んだのは、最初にチョイスしたものと別のキャラクターをもつ楽器だった。 劇場にふさわしい正統派の1台をチョイス たいへんな役目を無事に終えた山下さんに、チョイスのポイントをうかがおう。 小サイズ1.JPG 「まず神奈川芸術劇場が演劇、ミュージカル、ダンスの上演を目的とした劇場空間であることや、その音響(音の反響など)の具合、ピアノがミュージカルのアンサンブルの中で弾かれたりダンスの伴奏役として弾かれるという可能性などを考慮し、<存在感のある音を生み出す楽器>であることが大きなポイントだと思いました。ご用意いただいた3台は当然ながらすべて素晴らしいんですが、今回の基準に照らしてみると1台はちょっとおとなしかったので、まず選考から除外しました。残った2台を交互に弾き比べると、これがどちらも捨てがたい。最終的に選んだ1台は音のバランスが素晴らしく、どういった演目でも使えるだろうという判断のもとに決めた、オーセンティック(=正統派)な楽器です」 もう一台にも、最後まで心惹かれているように見えましたけれど。 「鳴りっぷりは、そっちのほうがよかったんですよ。ワイルドな楽器でした。『自分のコンサートのためのピアノを選べ』って言われたのなら、迷わずそっちを選びますね(笑)。でもいろいろな人が演奏する劇場のピアノとしては、ちょっと主張しすぎていて個性が強すぎるかな。今回は責任重大ですから、そこは考慮しないといけませんので」 ご自分でチョイスした楽器が芸術劇場で活躍をしていくわけですが、"生みの親"になったわけですね。 「その通りです。しかし楽器というのは演奏されながら育つものであり、名手によって弾かれるものは音楽を吸収してどんどん個性を宿していくものなんですよ。ですから劇場に納入されたのち、たくさんの出番を与えられ、たくさんのお客さんに聴いてもらって、ますます存在感を増して欲しいですね。もちろん選んだ者としては楽器の成長ぶりを確かめるため、劇場へ会いに行かなくてはなりません。現時点ではそれがジャズ・コンサートなのか、それとも別のスタイルなのか、どういう形で実現するかわかりませんけれど、今からこのピアノを演奏できる日が待ち遠しいですね」 (2010年10月 取材・文:オヤマダアツシ) 山下洋輔さん出演の神奈川県民ホールギャラリー公演アート・コンプレックス2010 一柳慧×山下洋輔×有馬純寿 スーパーセッション詳細はこちら http://www.kanagawa-arts.or.jp/detail/10041001.html