芸術監督 白井 晃からのごあいさつ

白井 晃
白井 晃プロフィール

2019年度にあたり

KAAT神奈川芸術劇場は、今年で開館から9年目のシーズンを迎えました。

そして、新しい年度を迎えるにあたり、これまでにない素晴らしいラインアップが揃いました!

芸術は、表現者がいて、それを鑑賞する者がいて初めて成立します。表現者と鑑賞者の間に起こる精神的、感覚的な震えを作る場が劇場です。そのためには、表現者と鑑賞者が出会う機会をより多く作り続けることが私たちの使命だと考えて、豊富なプログラムを揃えることに注力してきました。そのことが、ひいては劇場が神奈川県民の皆さんに還元できることだと考えたからです。

KAATは常々、演劇、ダンス、身体表現、音楽、現代美術が共存する、表現のコンプレックスでありたいと思ってきました。今年度は、そのコンセプトを前面に押し出すことで、劇場全体が常にアートが溢れる魅力的な場所にしていくつもりです。ボール・パークというコンセプトがあります。スポーツ観戦をするスタジアムを中心に様々な楽しみが同居する公園構想です。横浜にも横浜DeNAベイスターズと言うプロ野球球団があります。ベイスターズ球団は、野球観戦の他に横浜公園全体が楽しみに溢れた場所であろうとしています。私が考えるKAATはいわばアート・パーク。神奈川・横浜のKAATに来れば、日頃触れることが出来ないワクワクする芸術に常に出会うことが出来る。そんな劇場でありたいのです。

2011年の開館以来、KAATは創造する劇場を標榜して、多くの芸術家と演劇、ダンス、コンサート、伝統芸能など、沢山の作品を創作してきました。KAATのある神奈川・横浜は、進取の精神に富んだ地として、昔から海外文化の窓口になってきました。それ故に、KAATは常に先鋭的な劇場であらねばと思っています。多くの先鋭的な芸術家と出会って、一緒に表現の可能性を考える。その結果、2019年度は今まで以上のプログラムが出来たと自負しています。演劇では、古典の現代的な解釈や、新演出、新作の上演。ダンスパフォーマンスでは、若手のカンパニーや海外アーティストの招聘。その他にも、キッズプログラム、現代美術や音楽パフォーマンスなど盛り沢山です。

さらに、今年度から私の芸術面でのサポートをして頂くために、劇作家、演出家、俳優の長塚圭史さんに芸術参与として、運営に参画して頂くことになりました。氏の力も得て、より精力的に芸術表現の可能性を広げて行きたいと考えています。

私たちの社会は今、ネットが普及し沢山の情報が容易に手に入るようになりました。そして様々な表現にも簡単に出会うことが出来るようになりました。しかし、簡単に手に入った情報や知識は、簡単に私たちの身体から抜けていきます。私たちの個性を形作るものは、自分の目で見て、自分の耳で聞き、自分の手で触れ感じたものです。自ら足を運び、直接身体で感じた発見や感動は、長く私たちの心に残り、記憶として深く刻み込まれるはずです。

KAATの今後の活動に、どうぞご期待頂ければと思います。

皆様のご支援、何卒よろしくお願い致します。

2019年4月
KAAT 神奈川芸術劇場 芸術監督 白井晃