KAAT神奈川芸術劇場プロデュース

「ゴドーを待ちながら」

  • 日時 2019/6/12(水)~2019/6/23(日)
  • 会場 大スタジオ
  • KAme
    先行
    2019/4/13(土)
  • 一般発売 2019/4/20(土)

去りゆく平成。始まる令和。
男たちはいつから待っていたのか。そして、これからも待ち続けるのか・・・
不条理劇の不朽の名作、ついに上演!

日韓共同製作作品『가모메 カルメギ』に於いて韓国で最も権威のある東亜演劇賞演出賞を外国人として初受賞するなど、海外からの注目も集める多田淳之介がベケットの名作に挑戦します。

年代の異なる2バージョンにて交互に上演!

主人公のウラジミールとエストラゴンを、60歳代の昭和・平成ver.と30歳代の令和ver.の2バージョンにて交互に上演。年代の異なる2組が、同じ舞台装置のなかで、同じ台詞を語る・・・ゴドーを待ち続けた昭和・平成バージョン、これからも待つであろう令和バージョンの違いをお楽しみください。

不条理な現代に「待つ」ことについて問う!

瞬時に連絡が取れる現代では、「待つ」ことが無駄な行為のように思われつつあります。ただ、ゴドーを待つ二人。不条理劇の名作が喜劇と思える現代に、多田淳之介が切り込みます!

 

原作:サミュエル・ベケット 

翻訳:岡室美奈子 (白水社「新訳ベケット戯曲全集1」) 

演出:多田淳之介

著作権代理:(株)フランス著作権事務所

 

出演:

大高洋夫  小宮孝泰 【昭和・平成ver.】  

茂山千之丞  渡部豪太 【令和ver.】  

永井秀樹  猪股俊明  木村風太


■舞台写真(6/13掲載)撮影:宮川舞子

<昭和・平成Ver.>

<令和Ver.>

 


■アフタートーク決定!

6月16日(日)18:00の回終演後
大高洋夫(出演)、小宮孝泰(出演)、
多田淳之介(演出)、
白井晃(演出家・俳優・KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)

6月17日(月)14:00 の回終演後
茂山千之丞(出演) 渡部豪太(出演)
多田淳之介(演出)、
白井晃(演出家・俳優・KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)

※空席がある場合のみ、別日のチケットをお持ちのお客様もアフタートークをご覧いただけます。(先着順)


【プロフィール】

多田淳之介(ただ じゅんのすけ)/演出家・東京デスロック主宰

1976 年生まれ。神奈川県出身。演出家。東京デスロック主宰。
古典、現代戯曲、ダンス、パフォーマンス作品まで幅広く手がけ、現代・現在にフォーカスし、言葉・身体・時間・観客との関係も取り込みアクチュアルに作品を立ち上げる。国内各地で演劇を専門としない人との創作、ワーク
ショップも積極的に行い、演劇の持つ対話力・協働力を広く伝える。韓国、東南アジアとの海外共同製作も多数。2014 年韓国の第50 回東亜演劇賞演出賞を外国人として初受賞。2010 年キラリふじみ芸術監督に公立劇場演劇部門の芸術監督として国内史上最年少で就任、2019 年3 月まで3 期9 年にわたり務める。四国学院大学、女子美術大学非常勤講師。APAF アジア舞台芸術人材育成部門ディレクター、東京芸術祭プランニングチームメンバー。
主な演出作に『ハッピーな日々』『再生』『亡国の三人姉妹』『가모메カルメギ』『奴婢訓』『ROMEO
& JULIET』など。

 

<演出家より>

 今回のテーマは「日本」そして「世界」です。

 サミュエル・ベケットの戯曲は一切の改変が許されず、戯曲に書かれている以外の演出、例えば音楽を流したりもできません。しかし、実際戯曲を上演してみると、それがベケットの戯曲を一番良く見せるのだということがわかります。もしかしたら、ベケット本人が書いたフランス語で上演されるのが一番良いのかもしれません。しかし、私たちは日本語で上演します。当然描くべきは今の日本で暮らす人にとって「ゴドーを待つ」とは何なのか?幸運なことに上演における出演者の性別は指定されていますが、年齢は指定されていません。

 今回はメインキャストの年齢が60代の[昭和・平成ver.]と、30代の[令和ver.]を上演します。世代の違う2バージョンを上演すること、そして日本特有の世界の区切り方である元号を冠するのは、時代が変わるタイミング(日本限定で)というだけでなく、日本人は今まで何を待っていたのか、これから何を待つのかという、極めてドメスティックな、日本が執われてきた、執われていくものの象徴としての意味合いもあります。

 アジア極東の不思議な島国ニッポンで、世界の名作戯曲によって日本人とは何か?をまず問いたい、そしてそれが人間とは何か?世界とは何か?というベケット含め世の芸術が問い続けている命題につながると信じています。それが翻訳戯曲上演の意義なのではないかと、この島国で芸術活動をする希望なのだと思っています。


■出演者のコメントが届きました!(5/28更新)

■出演 大高洋夫 コメント

鴻上尚史と僕は麻雀がしたかった。1人は確保、もう1人は・・・満場一致で早稲田大学演劇研究会の一期先輩で、現KAAT神奈川芸術劇場・芸術監督の白井晃さんに狙いを定め即電話。不在だった。失意のどん底、鴻上と二人で喫茶店。喋ることもなくなり沈黙に耐えきれず、ついと出た僕の言葉「そろそろ俺たち劇団作んない?」鴻上の糸のような目が三倍くらいに開いた。第三舞台旗揚げ公演『朝日のような夕日をつれて』は『ゴドーを待ちながら』をベースにした作品。あれから 38 年、念願本丸ウラジミール。もしあの時白井さんと楽しく麻雀していたら第三舞台も『朝日~』もそしてこの舞台もなかったかと思うとゾッとする。白井さんのあの日の不在に心から感謝している。

 

■出演 小宮孝泰 コメント

最初に今回の戯曲を読んだとき、これは訳が新しいんだろうなと感じたんです。そのとおりでした。難解なものを想像していたら、意外ととっつきやすいんですよ。掛け合いのテンポもいまっぽい。あと、あきらかにコミカルだったり、ふざけてたり。そこを難しく解釈することも可能なんでしょうけど、でももっと真に受けてふざけていいんだろうなと思いました。それでいて、詩的に響くところはちゃんとグッとくる。だから僕としては、何かをわかろうとしたり、役を作り込むよりは、もっと等身大に近いカタチで臨みたいところ。さすがに60歳過ぎてますから、キャリアの中からあの手この手と使える手も自然と出てくるでしょうし。親しみやすいゴドーになる……のかな? そこは本番あけてのお楽しみで。

 

■出演 茂山千之丞 コメント

昨年オファーをもらった時点で、千之丞襲名が決まっていたので、「おおっ」となったんです。というのも、ウチは祖父(二世千之丞)も親父(茂山あきら)もベケット作品の演出をやっているし、僕自身もゴドーのパロディのような芝居を作ったこともある。襲名のタイミングでこういうお話がくるのも、不思議な縁だなと。今回はあくまで多田さんの演出ですので、僕としては一パーツとして自由に使ってもらえたらと思っています。ことさらに狂言を出すつもりはないですが、どうしても透けてくるものはあるでしょうね。そういう、役者自身が透けてくる部分もまた、この作品の魅了じゃないでしょうか。メタ的な台詞もあるし、舞台装置もそう。僕自身が楽しみなように、お客さまにも楽しんでもらえたらいいですね。

 

■出演 渡部豪太 コメント

『ゴドーを待ちながら』の存在は知っていましたけど、オシャレな作品なんだろうなぐらいに思っていたんです。でも実際に触れてみたら、そんな生易しいものではないですね。懐が深いし、いろんな解釈もできる世界が広がっていました。誰がいつの時代にこの作品に関わったとしても、当たる光の角度によって違った輝きを見せる宝石のよう。だから古い作品という意識はほとんどないですね。エストラゴンとウラジミールという、ある意味、陰と陽のような一心同体の登場人物。別バージョンの大高さんと小宮さんが最初の本読みから凄くて、ファンになってしまったんですけど、今は負けてられない気持ちがあります。千之丞さんも強力ですから。ぜひ令和元年に、現代の最先端の演劇作品として、観にきていただければと。

 

 


【稽古場レポート】(6/7更新)

 公演に向けてまだ1ヵ月以上を残したある日、外光を大きく取り入れた明るいアトリエスタジオで『ゴドーを待ちながら』の稽古は行われていた。
 休憩のタイミングを見計らって室内に入ると、雑談の中から「三島由紀夫の『近代能楽集』」という単語が耳に入ってくる。渡部豪太が、狂言師でもある茂山千之丞にいろいろと尋ねているようだ。
 サミュエル・ベケット不朽の名作『ゴドーを待ちながら』。演出を担当するのは、古典から新作まで自在に手がけ、近年は韓国で東亜演劇賞演出賞を外国人として初受賞も果たすなど目覚ましい成果をあげている多田淳之介だ。千之丞と渡部は、主役の2人組――ウラジミールとエストラゴンを演じる。
 もっとも今回の『ゴドー』は2バージョンあり、千之丞と渡部が出演するのは「令和ver.」と呼ばれる。もう一つは「昭和・平成ver.」と呼ばれ、大高洋夫と小宮孝泰がウラジミールとエストラゴンを務める。

「令和ver.」の稽古が始まり、まずは千之丞のウラジミールと渡部のエストラゴン、二人のシーンである。一見、先ほどの雑談の延長でもあるような自然さが漂っている。岡室美奈子による新訳が、若い2人の現代的なテンポにハマっているのだ。
 ベケット本人により同戯曲の改変は禁じられているが、台詞の行間だけでも解釈の余地は大きくある。いまはまだ、そのディテールの手触りを演出家と俳優がともに探っているように見えた。「行こう」という一言をめぐっても、どこへなのか? 本気なのか? それともポーズなのか? 劇場から出て行くというメタ的な意味なのか? 様々な角度から吟味し、実際に身体を動かして、試してみる。積極的に提案するのは渡部だ。千之丞がそれを受け入れ、多田が調整を加える。細部へのフォーカスとともに、全体を俯瞰しながら、何か新しいものが生まれるのを待つ感覚も室内に充溢している。
 しばらくして、さらに2人の登場人物が加わる。ポゾーとラッキーだ。「令和ver.」では、永井秀樹がポゾーを、猪股俊明がラッキーを演じる。「『2』という数字には、喜劇の秘密が隠れているような気がする」とは千之丞の弁だ。言われてみれば、狂言の太郎冠者・次郎冠者も2人組である。
 ポゾーとラッキーのくだりを一通りさらうと、今度は木村風太演じる少年役とのシーンとなる。ギリギリまだ10代の木村が加わると、『ゴドー』の世界はさらにアップデートされ、「前にも会ったことあるよな?」「おれのこと、わからないのか?」という台詞も、現代的なエンタメコンテンツのタイムリープもののような切実さと切なさを帯びてくる。その間も、多田は室内を移動しながら客席からの見え方を何度も確認している。
 なぜそれを言うのか? なぜそこに立つのか? 『ゴドー』を問い直す作業はいつどの時代でも行われきたことだろう。こと、この令和ver.においては、まずは一つ一つの要素にあえてつまずき、立ち止まって考えることに意味があるように見えた。

 メインキャストが入れ替わり、次は「昭和・平成ver.」の稽古となった。大高洋夫がウラジミールを、小宮孝泰がエストラゴンを演じる。「令和ver.」に比べると、ぐっと年齢層が上がる。
 先ほどポゾーとラッキーを演じた永井秀樹と猪股俊明は居残りである。ただし、二人の役柄は入れ替わる。すなわち猪股俊明がポゾーを、永井秀樹がラッキーを演じるのだ。衣裳も先ほどとは異なっている。
 大高のウラジミールと小宮のエストラゴンは互いに持っているものをすりあわせるだけでも、世界が立ち上がる。大高のふりきった演技と、小宮のちょっとした芸人的な呼吸が絶妙にかみ合うのだ。そこに多田は、要所要所、戯曲に基づくチューニングを施していく。
 ここでも新訳が効いている。自然体な台詞が、大高と小宮に自由を与えているように見えるのだ。あるいは、現時点で多田がそのような状況をお膳立てしているだけなのかもしれないが。

「こんなにも別物になってくるとは思っていなかったですよ」
 それぞれの稽古を終えたスタジオで、多田がつぶやいた。
 何かが生まれる予兆を孕んだ「令和ver.」と、新訳により手練れの二人が水を得た魚のように跳ねる「昭和・平成ver.」。それでも現時点で共通した印象を述べるなら、巻き込まれながら感じる『ゴドー』だった。
「テーマは『日本』そして『世界』です」
 そう語る演出家・多田のコメントは伊達ではない。
 楽しくて、切実。私たちのいる場所について思い巡らせるための『ゴドー』を待っている――。

 

取材・文:九龍ジョー(ライター・編集者)


 

【掲載情報】

ぴあニュース/渡部豪太さん インタビュー

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190419-00000000-pia-ent

演劇最強論/多田淳之介さん インタビュー

https://www.engekisaikyoron.net/godot-tada/

朝日新聞/大高洋夫さん 茂山千之丞さん インタビュー

https://www.asahi.com/articles/DA3S14046309.html?iref=pc_ss_date

JapanTimes/多田淳之介さん 大高洋夫さん インタビュー

https://www.japantimes.co.jp/culture/2019/06/05/stage/samuel-becketts-waiting-godot-brought-reiwa-era/#.XPm8wNL7TIU

神奈川新聞/多田淳之介さん インタビュー

https://www.kanaloco.jp/article/entry-172631.html


【スタッフ】 (*KAAT神奈川芸術劇場スタッフ)

美術  乘峯雅寛

照明  岩城 保

音響    徳久礼子*

衣装コーディネート 藤谷香子

演出助手  岩澤哲野

舞台監督    小金井伸一*

プロダクション・マネージャー  堀内真人*

制作   本郷麻衣

プロデューサー  澤藤 歩* 

制作統括 横山 歩*

 

企画製作・主催:KAAT神奈川芸術劇場

助成:文化庁文化芸術振興費補助金

 (劇場・音楽堂等機能強化推進事業)

  独立行政法人日本芸術文化振興会

 

English introduction ⇒ Click here!

 

スケジュール

6.12(水) SH 19:00
6.13(木) R 19:00
6.14(金) 休演日  
6.15(土) SH 13:00 R 18:00
6.16(日) R 13:00★ SH 18:00◆
6.17(月) R 14:00◆  
6.18(火) SH 14:00 R 19:00
6.19(水) 休演日  
6.20(木) SH 14:00 R 19:00
6.21(金) R 14:00 SH 19:00
6.22(土) R 13:00 SH 18:00
6.23(日) SH 13:00  

SH…昭和・平成ver
R…令和ver

※受付開始・当日券販売は開演45分前。
開場は開演30分前。
★の回には託児サービスあり。
(公演1週間前までに要予約・有料。マザーズTEL0120-788-222)

◆の回はアフタートークあり
6月16日(日)18:00の回終演後
大高洋夫(出演)、小宮孝泰(出演)、
多田淳之介(演出)、
白井晃(演出家・俳優・KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)

6月17日(月)14:00 の回終演後
茂山千之丞(出演) 渡部豪太(出演)
多田淳之介(演出)、
白井晃(演出家・俳優・KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)

※上演時間は約2時間10分
(途中休憩なし/両Ver.共通)
※お花は、ロビー花、楽屋花ともお受け取りします。
ロビーが狭いのでスタンド花でなく、小さくアレンジでしたものでお願いします。
プレゼントにつきましては、生もの以外はお受けさせていただきます。


チケット

当日券
■上演時間
約2時間10分
(途中休憩なし/両Ver.共通)

全席自由(入場整理番号付):5,000円
各公演とも開演45分前より、5階大スタジオ当日券売り場にて販売いたします。

※未就学児の入場はご遠慮ください。
※各種割引チケット、セット券は前売りのみの取扱い

チケット発売日

KAme先行(かながわメンバーズWEB先行販売): 2019/4/13(土) ~2019/4/19(金)

かながわメンバーズ入会はこちら

一般:2019/4/20(土)

チケット料金
*入場整理番号付き自由席 一般:5,000円 2バージョンセット券:9,000円 シルバー割引 4,500円 (満65歳以上) U24チケット 2,500円 (24歳以下) 高校生以下割引 1,000円(高校生以下) ※U24、高校生以下、シルバー割引は、  4/20よりチケットかながわの電話・窓口で取扱い(前売のみ、枚数限定) ※2バージョンセット券は、  4/13よりチケットかながわで取扱い(前売のみ・枚数限定) ※未就学児の入場はご遠慮ください。 ※営利目的の転売禁止。 ※車椅子でご来場予定のお客様は、事前にチケットかながわ0570-015-415(10:00〜18:00)までお問合せ下さい。