芸術監督 白井 晃からのごあいさつ

白井 晃
白井 晃プロフィール

KAAT神奈川芸術劇場のアーティスティック・スーパーバイザーとしての2年を経て、改めてこの4月から芸術監督に就任させていただくことになりました。

開館から5年、私たちKAATは演劇やダンス、コンサート、伝統芸能などの様々な演目を上演してきました。そして、どの公演においても「常に新たな表現を模索する」という姿勢で臨んできました。時代とともに、表現の方法は変化していきます。テクノロジーの進化は、表現の可能性を広げます。新しい表現とは何なのでしょうか。それは過去の文化を知りながら、その枠を超えて今を生きようとする姿勢なのかもしれません。もしくは、既成の概念に囚われず、全く違う角度から物事を捉えて、私たちの「今」を探ることかもしれません。私はKAATが常にそうした表現に挑戦できる劇場でありたいと思っています。

横浜は昔から海外の文化、芸術もたくさん入ってくる場所で、新しい表現が生まれ育つ土壌を持っています。東京との距離は、この進取の精神をより育んだと思っています。日本の政治経済の中心である東京から少し距離を持った横浜、神奈川でこそ、文化や芸術が先行して発展していく必要があると信じています。皆さんの声や力を頂きつつ、この精神を忘れず劇場に関わらせていただくつもりです。

舞台や展示という芸術表現は、自ら足を運んで劇場や会場に向かう必要があります。これはコミュニケーション技術の発達で、あっという間に世界中の情報が手に入る時代の中にあって、むしろ特殊なことかもしれません。しかし、だからこそ手に入るものがあるはずです。一つの公演や作品に出会った時、その場に立ち会った自分と向き合うことにもなります。記録や形に残らなくとも、その時そこにいて何かを感じた自分を作ることになるはずです。これからもKAATは、そんな記憶に残る作品を精力的に送り出したいと思っています。

先鋭的な表現は、演劇、身体表現、音楽、現代美術の枠組みを越えて、ますます可能性が広がっていくでしょう。時代を映す鏡として、この劇場が機能していくように、積極的に新しい作品を提示していきたいと思います。

これからのKAATにどうぞご期待ください。

2016年4月
KAAT神奈川芸術劇場
芸術監督 白井晃