芸術監督 白井 晃からのごあいさつ

白井 晃
白井 晃プロフィール

2017年度に向けて

KATT神奈川芸術劇場は、今年で開館から7年目のシーズンを迎えました。

2011年の開館以来、KAATは創造する劇場を標榜して、多くの芸術家とともに演劇やダンス、コンサート、伝統芸能など、沢山の作品を創作し、観客の皆様に提供させていただきました。

横浜という地の利を生かした作品作りは、私たちのもっとも大切な使命です。それは、この劇場の存在意義と言っても過言ではありません。

横浜は、歴史的観点から見ても、多くの海外からの文化芸術が入り込んできた場所です。進取の精神に富んだこの土壌は、未来に向けて更なる広がりを生む可能性を持っています。東京との距離は政治・経済・文化の中心から程よい距離をもって独自の価値を保持できてきたと考えています。この劇場が、他のどこにもない劇場であり続けるために、鋭敏に感覚を研ぎすまし、表現の最前線であろうと思っています。

そもそも「芸術」とはなんでしょう?
「表現者や表現物と、それに触れる鑑賞者が互いに作用し合うことで、精神的、感覚的な変動をえようとする活動」という定義があります。だとすれば、KAATは、互いが出会い、触れ合うためのサロンであり、広場であろうと思います。演劇、ダンス、音楽、現代美術が交錯する芸術のためのサロンとして、多くの人々が集える広場。それが私たちの目指すKAATの姿です。

メディアの発達により、移動せずとも沢山の情報に触れることができるようになりました。と同時に、私たちが失ってしまった衝動があるはずです。自分たちの状況に違和を感じて、飛び出そうという欲望です。それは、人やものに直接触れることで起こる、心の震えを求めているからだと思います。

舞台芸術や劇場表現の特性は、決まった時間に決まった場所で、人が表現者や表現物に対峙するところにあります。昨今の情勢の中、実はこのことは大変なことであることをあらためて感じます。だからこそ、この瞬間を創りだし、出会える機会を作り続けることが劇場の役目であると信じています。

KAATは今年も、演劇、ダンス、音楽、現代美術を積極的に交配させ、芸術表現の可能性を広げていきたいと考えています。同時に、劇団四季の長期公演など、多くの観客との出会いを求めて、様々なプログラムを提供していきます。また、若手の表現者の育成や、県内での表現活動にも取り組んでいこうと思っています。

今年度のKAATの活動にも、どうぞご期待いただければと思います。

2017年4月
KAAT 神奈川芸術劇場:芸術監督 白井晃