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白井晃芸術監督のご挨拶を更新しました。

2020-09-01

KAATリスタートに向けて

 

KAAT神奈川芸術劇場は、本日9月1日から5ヶ月ぶりに活動を再開いたします。

 

4月1日の自粛要請、7日の緊急事態制限を受けて、劇場は神奈川県の要請の元活動を休止してきました。しかしながら、この間、私たちは完全休止をしていたわけではなく、オンラインでの情報配信や、今後の活動再開に向けて準備を積極的に続けておりました。

 

そして、いよいよ、本日からKAATは再スタートいたします。
残念ながら、新型コロナウィルスの感染拡大は未だに収束の気配を見せず、今後の状況も予断を許しません。それだけに、歓喜の下の再開というわけにはいきませんが、細心の注意を払いながら、慎重に粛々と前に進み出したいと思います。そして、観客の皆さんと劇場の信頼関係を再構築できるように、最善の努力をしていくつもりです。

 

世の中に不安が残る中、何故、私たちは活動を再開するのか。このことを私たちは考え続けてきました。
今、私たちは、新型コロナウィルスという見えない恐怖を前にして、心が萎縮しています。自ら自分の感情を押さえ込んで、心の動きを押し殺しているかのようです。しかし、その状況が私たちにとって決して健全な姿であるはずがなく、徐々にその緊張を解いていく必要があると思っています。良くないのは、心が縮こまっていることに、みんなが慣れてしまうことです。
自粛という名の下に、心を動かさないこと、閉じこもること、行動に移さないこと、コミュニケーションを取らないことに慣れてしまっていく。このことが一番危険なことのように思います。人間、慣れほど怖いものはありません。
劇場が活動をしないこと、何も起こさないこと、観客が来ないこと、表現が無くなること、表現を求めなくなること、このことに慣れてしまってはいけない。でも、人間というのはなんでもすぐに慣れてしまう動物です。喜びや感動も、何度も体験するとで慣れてしまうのと同様に、心を抑え込むことにも慣れていってしまう。いつの間にか、感情が動くような物事を自分たちから排除するようになってしまいます。ですから、このことに抗い続けなければならないと思っています。
心を動かさないことに慣れてはいけない。動き出さないことに慣れてはいけない。喜びを求めないことに慣れてはいけない、悲しみを感じないことに慣れてはいけない、怒りを感じなくなることに慣れてはいけない、感動しなくなる事に慣れてはいけない。
青臭い言い方ですが、私たちの生の営みは、日々の中に一握りの喜びを得るためにあるはずだと思うのです。心を縮こませ、脅威し、逃れ、閉じこもるために私たちは生きているはずがありません。心を動かし、感動したり、笑ったり、怒ったり、悲しんだり、泣いたりする必要があるはずです。
劇場はそのための場所であり続けなければならないと思っています。

 

KAATは来年1月で10周年を迎えます。9月1日から周年事業がスタートします。当初予定していたよりも制約が増えるものの、多くのプログラムや企画を考えています。
2011年に開館した年に、東日本大震災がありました。苦難のスタートではありましたが、皆さんの力のお陰でここまで成長することができました。改めて、この劇場を支えてきてくださった多くのアーティスト、スタッフ、そして観客の皆さんには、心から御礼申し上げます。
これからが、この劇場の真価を問われる時間になると思います。
劇場が、私たちの生きている現実を映す場所であり、人々の心を揺り動かす場所であり続けるために、私たちはこれからも活動していきたいと思っています。

 

20年後半のKAATの活動にご支援賜りますよう、何卒よろしくお願いします。
この状況は、変わらないはずがありません。劇場が活動していくことで、皆様と再び出会えるチャンスができ、共に語り合える時間が来るはずです。
元気な姿で、皆様とお会いできる日が来ることを心から願っております。

                                

                                2020年9月1日
                                KAAT 神奈川芸術劇場 芸術監督 白井晃

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