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ウィル・タケット×首藤康之『鶴』記者懇話会レポート

2012-02-23

2月3日、英国大使館にて記者懇話会を行いました。登壇したのはKAAT神奈川芸術劇場芸術監督宮本亜門氏、演出・振付のウィル・タケット氏、主演ダンサーの首藤康之氏、衣装・ファブリックデザインのワダエミ氏、音楽(出演も)の藤原道山氏の5名で、世界初演となる『鶴』についてそれぞれの立場から語りました。

 

KAATのNIPPON文学シリーズについて
まず最初に宮本亜門芸術監督からKAATのNIPPON文学シリーズについての説明がありました。「昨年、こけら落とし公演『金閣寺』ほか、杉本文楽『曽根崎心中』、(芥川龍之介の小説をコラージュした)『Kappa/或小説』、人形劇俳優平常の作品(『はなれ瞽女おりん』)、春風亭小朝の落語などを上演しました。今年はこの『鶴』、『トカトントンと』、『御伽草子/戯曲』、『らくごの会』、リーディング公演ですが『耳なし芳一』を上演します。もともとこの日本文学シリーズは、日本文学の持つ力をあらためて発見するシリーズでした。今年、NIPPON文学シリーズの関連企画として、僕と松岡正剛さんとで「日本文学力」をテーマにしたトークセッションをします。このシリーズを西洋文明の入ってきた横浜という地にある劇場で始めたのは、日本文学を舞台化し内外に発信したかったからです。東日本大震災から1年がたとうとしている今、日本の力、日本文学の力を再発見するこのシリーズの意味があらためて問われているともいえるでしょう。」

 

『鶴』について
「主演の首藤さん、演出のウィル・タケットさんをはじめ、僕が常々一緒に仕事をしたいと思っている人たちが、キャストにもスタッフにもそろっています。これだけの豪華なメンバーに、嫉妬を覚えてしまうほどです。」

国際的なスタッフにより「鶴」の新しいヴァージョンを作る試み
続いて演出・振付のウィル・タケット氏がコメント。「KAATというすばらしい劇場で上演できるのをとてもうれしく思っています。(日本人にとってなじみのある)「鶴の恩返し」がモチーフの作品を外国から人を招いて作るということに信頼関係を感じています。スタッフにはすばらしい人たちにおいでいただきました。昨日からリハーサルが始まったのですがダンサーたちのコラボレーションも楽しみです。ヴィジュアルはかなりミニマル、抽象的、構造的になります。その対極にあるのが、ワダエミさんがデザインする大変美しいコスチュームと、鶴が織る布地です。彼女の美的感覚、布地に対する知識は深く、大変楽しみです。鶴のパペットはかなり大ぶりで、少し文楽に影響を受けたというか模した使い方になります。パペットは、空港で棺かと聞かれたくらい大きな箱に入れて私が持ってきました」

すてきな作品になると信じています
首藤康之氏は日本文学を題材に、と聞いた時、「鶴の恩返し」がすぐに思い浮かんだそうです。
「以前ウィルが手がけた『兵士の物語』を見て以来、ずっと一緒に作品を作りたいと思っていたので大変うれしく思っています。ウィルの振付けは、単にストーリーやキャラクターを語るのではなく、万人に共通する人間のあらゆる感情を表現するようにつくられているので、世界に向けても発信できる作品になると思います。非常にチームワークのとれたいいカンパニーですし、すてきな作品になると信じています。ぜひ劇場に足をお運び下さい」

鶴の恩返しを衣装で表現します
ワダエミ氏は衣装の依頼を受け、とてもうれしかったそうです。
「いろいろと話を聞くうちに、スタッフの中に共通の友人がたくさんいることがわかったんです。「鶴の恩返し」を衣装と3枚のファブリックで私は表現します。10m×10mの大きな布で太陽、月、鶴が飛び去っていくのを表します。薄いシルクを重ねるつもりで、北京の私のアトリエで作成します」

スタンダードな作品になっていってほしい
尺八奏者の藤原道山氏は、舞台に立ち演奏します。この日も使用する曲のさわりを披露しました。
「日本音楽は地に足をつけていくものが多く、今回はダンスなのでどうアプローチしたらいいかと悩みました。ウィルと話した時に、彼は日本的要素を理解してくれているとわかりました。彼は和紙に薄墨が広がったところに濃い墨をたらしたような感じとイメージを語ってくれました。「鶴の巣ごもり」という尺八の曲を引用しつつ尺八の音色を生かした音楽を作ります。ヴィジュアルが美しい作品ですが、音も楽しんでいただけたらと思っています。世界をつなぐ作品に携われてうれしく思います」

このほか会場からの質問に答える形でタケット氏よりいくつ補足がありました。言葉でストーリー展開をすることはなく、抽象的なヴィジュアルを補ったり、詩的で質感のある言葉を紡ぐことになる、ナレーションが入るとの説明がありました。

そしてダンスのテイストはどのようなものになるかという質問に、「足さばきはクラシック・バレエ、腰はコンテンポラリー・ダンス、頭は演劇」という答えが返ってきました。

会見の前日よりリハーサルがスタートしたのに、多国籍なカンパニーながら、目指す舞台のイメージをスタッフみなすでに共有しているようでした。完成度の高い作品となりそうな予感で、日英共同制作、『鶴』の世界初演にますます期待が膨らみます。

 

(文・結城美穂子)